「絶対平和(Perfect Peace)」
一・人々は二度と戦争を起こしてはいけない
一・人々は人間を殺傷出来うる武器を製造・所持してはいけない
一・人々はみな平等であり、何者にも弾圧されてはいけない
一・人々は仕事に努め、娯楽に身を興じ、平和に過ごさなければならない
一・世界大統領は、上の法と人々の秩序を尊守する事を最上に考慮し、行動すべし
〜世界法典 第一章『絶対平和』より一部抜粋〜
――西暦2150年
第四次世界大戦から30年
地球に、選ばれた6億5千万の人間のみが生き残って30年
地上には大戦の遺産である細菌兵器の残骸「死の灰」が降り注ぎ、人々は地下コロニーへの移住を余儀なくされていた
ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、東京、北京、パリ、アブダビ、ブエノスアイレスと、世界に点在する8つの巨大地下コロニーでは、それぞれ約5000万〜1億の人々が一律に定められた世界法典の基に毎日を過ごしている
武器を持たず、争わず、憎しみあわず、仕事に努め、皆平等に
世界は「絶対平和」の法規の基に今日も、静かに太陽の周りを回っていた
―――その環境の中で過ごす一人の少年
その少年が天才格闘家として東京で名をあげ始めた20歳の2月、世界各地で異変が起き始める
ブエノスアイレスにある第8コロニーでの連続変死事件
その半年後、北京にある第6コロニーでの謎の病原菌の流行
世界の人々は、各地で起きる不可解な事件に多少の不安を抱きながらも、今日も幸せに、仕事に精を出し、娯楽に身を興じ、生きていた
―――世界に起き始めた「変化」
人為的なものなのかどうか、この時はまだ何もわからなかったが
確実に
世界は「崩壊」へと向かって、ゆっくりとその歩みを始めていた |