友達から聞いた話です。
何年か前の夏休みに彼のおじいさんが事故で亡くなったそうです。それで葬式のため彼がしばらくぶりに田舎の実家に帰った時のこと。
都会を離れた農村に建つ家並みは、昔と変わることなく、青々とした山々と田んぼの間にポツポツとたたずんでいるだけ。
久しぶりの実家であったけれども、葬式の準備や後片付けなんかで追われてゆっくり出来なかったらしく、5日くらい経ってようやく家族で一段落みたいになり、一人部屋を回っていた。
その時、居間のタンスの横の棚に、見たことない日本人形が置いてあったのに気づいた。「これは何??」と聞くとおばあちゃんは
「あぁ、それはちょっと前にじーさんがどっからか買って来たんだ」
と言う。まぁ取り立てて豪華でもなく、どこにでもある日本人形みたいな感じだった。
しかしなんか違和感がある。うまく言葉に出来ないが、背筋がぞっとしたのでとりあえずシカトすることにした。
その夜。
みんな寝ていて、コオロギやカエルの声しか聞こえない真夜中。トイレに行きたくなり目が覚めた。
起きると嫌が応にも隣の部屋のあの日本人形が気になる。ふすまの陰からちょっと隣の部屋を覗いてみると、思わずギョッとした。
日本人形が「コッチ」を向いている
昼間見たときは真っ正面を見ていたのだが、今の日本人形は斜め左45度、正に部屋を覗いている自分の方を見ているのである。
さすがに怖くなり、ビビリの自分は家族が寝てる部屋との間のふすまを全部開けて、自分から寝ている家族が見える状態でその日本人形を直しに行った。
その日本人形を直そうと持ったその時
「ガラガラガシャーン!!!!」
と、金属の落ちるようなものすごい音がした。
何が起きたのかと思い振り返ると、ふすまの上の壁の所に飾ってあった、おじいさんが昔から集めていた刃がむき出しの西洋の刀やら鎌やら銃やらが全部落ちていた。さっきまで自分がふすまから覗いていたまさにその場所に。
もしもう少しあそこにいたら・・・・・・
・・・・あ
もしかしたらこの日本人形が守ってくれたのかもしれない・・・
この日本人形が自分をこっちに呼び寄せて助けてくれたのかも・・・
この時この日本人形の違和感の秘密がわかった気がして少しだけほっとした。
そして手に持っていたその日本人形を見ると、
その日本人形はゆっくりと口を開け、はっきりと女の声でこう言った。
「 ナ ン デ 死 ナ ナ カ ッ タ ノ 」
そうだ思い出した。
うちのじいさんはこの日本人形を買ってきた5日後に
「 こ の 部 屋 の タ ン ス の 下 敷 き に な っ て 死 ん だ ん だ っ た 」 終
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